訴訟等での地代、家賃等、賃料の鑑定評価に強い不動産鑑定士の事務所です

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  地代や家賃等、使用の対価の評価です。権利の評価にも関連します。

 売買の対価に対して、使用の対価が賃料(地代や家賃)です。
 賃料は、使用の対価であるため、1年とか、1月とかの一定期間に対応する金額で示されます。つまり、年額地代30万円、1月家賃6万円のようにです。
 賃料には、新規に設定される「新規賃料」と、契約が更新されたとき等に更改される「継続賃料」があります。また、毎年または毎月、実際に支払われる「支払賃料」と、権利金や敷金が授受された場合の経済的な利益を考慮して求める「実質賃料」に区別されます。

  ◎以下では、調停や訴訟での争点となる「継続賃料」の鑑定評価に触れてみます。合意してすぐに新規賃料で争いごとになることは稀れでしょうから、「継続賃料」がどのような過程で鑑定評価されるのかについて紹介してみましょう。
 「継続賃料」も調停や訴訟に関連することが多い鑑定評価ですから、ポイントとなることをセンス良く触れる必要があります。それは、裁判官の耳に心地よく響くという意味です。そのためには、学説や判例の動向を常に把握すると同時に、日頃から弁護士等の法律の専門家から法律や判例のツボをお聴きしたりして、法的なセンスを磨いておくことが肝心です。

  賃料の鑑定評価の特徴

  第1章 賃料の鑑定評価の方式とその特性

 適正な継続賃料を求める鑑定評価の手法には、@差額配分法、A利回り法、Bスライド法、C賃貸事例比較法、D土地残余法に準ずる手法、E公租公課倍率法等があります。継続賃料の鑑定評価手法は、裁判例等において確立されてきた経緯があり、その変遷の時代背景と法理を理解しておく必要があります。

 以下では、話しを分かりやすくするため、土地の賃貸借を念頭に考えます。
 なお、継続賃料の鑑定手法は、それぞれの特徴を持つとともに相互に補完的な関係にあり、継続賃料を求める際には、他の手法の併用及び賃貸借契約の経緯や賃料不相当化の事情等、その他の比較考量項目を総合的に比較考量し、検討することが必要とされます。

1)差額配分法の特性
 差額配分法は、既定の賃料に、価格時点における正常賃料と既定の賃料との差額の内の一定部分を加算し、適正賃料を求める手法です。
 差額配分法が考えられた時代背景は、経済の高度成長、都市への人口集中、地価高騰です。
 この時代は、固定資産税や物価もどんどん上がるのですから、地主が地代も値上げされるべきと考えるのも当然でした。そして、争いとなることも多く、借地関係の当事者間でそれをどう調整すべきかということが問題となりました。そこで、差額配分法では、地代値上げの背景である地価の上昇が、借地人等の営業努力や経済社会の発展によってもたらされるものであると考え、従って、地代の上昇分も、その全部が地主に帰属する(つまり、賃借人が全部、負担する)のは衡平ではなく、地主、借地人、社会一般の三者に帰属させるべきであるとしました。そのような配分の仕方には、三分法と折半法等が採用されました。
 この手法は、右肩上がりの経済における地価高騰が地代にもたらす影響を、できるだけ緩和しようとするものであり、弱者救済の社会法的な性格を持っていたと評価されます。しかし、最近の判例では、この手法の前提とする経済社会情勢が一変してしまったために、差額配分法が地価高騰の影響を出来るだけ緩和する手法であったとして一定の評価を与えながらも、配分法の考え方そのもの、特に、配分割合の根拠に対し疑問を投げかけています。しかし、配分法の意義は、借地人と地主での利害を調整することにその本質があり、継続賃料を求めるに当たっての基本的考え方を示しており、このような観点からは右肩下がりの経済の下でもその意義は失われないと考えられます。

2)利回り法の特性
 利回り法は、土地価格を元本、賃料を利息や果実(純賃料部分)と捉え、その純賃料部分に賃貸借を継続するために地主が負担する義務のある必要諸経費等を加算して継続地代を求める手法です。基本的な考えは新規賃料を求める際の積算法と同じであり、土地の投資財としての性格を重視する立場に立つ手法といえますが、地価や公租公課の変化等、借地借家法に例示されている賃料改定事由が試算過程に組み込まれていることから、裁判等では、利回り法に類似した手法が古くから採用されてきました。しかし、元本の捉え方や、これに乗ずべき期待利回り、必要諸経費等についての解釈は事案により異なる傾向がありました。そこで、鑑定評価基準では、期待利回りとして継続賃料利回りを採用する等、整理を行った経緯があります。継続賃料利回りを採用するようになったのは、前回の賃料交渉の際の合意の事実を重視するからとされ、利回り法は、賃貸借の継続的で安定的な関係を重視する手法として特徴づけられたものと考えられます。しかしそれにも拘らず、この手法による試算賃料が、地価に基礎を置く純賃料と公租公課を構成部分とすることから、地価の変動が大きく影響を及ぼすという欠点があり、地価変動が緩やかな情況において適合的な手法であると考えられます。
 さて、この欠点から、地価高騰時には、利回り法による試算賃料はかなり高額に試算されました。そこで、基礎価格として更地価格から借地権価格を控除した価格を採用したりして、地価高騰の影響を出来るだけ小さくする工夫がなされてきました。但し、最近の判例で、基礎価格として更地価格から借地権価格を控除することが、借地人に有利な方法であり、その根拠も不明確であると批判され、それに替って、判例では基礎価格として土地の収益価格を採用すべきであるとの考えが示されました。しかし、土地の収益価格は、土地に帰属する純収益を還元利回りで資本還元して求められるものですが、土地に帰属する純収益とは、地代そのもの、または、地代を含む地代の源泉であり、判例の指摘するような方法では、鑑定評価によって求めるべき地代を先に求めてから、そこからまた地代にフィードバックするようなものであり、この考え方は採用し難いと考えられます。但し、土地に帰属する純収益は、地代の源泉であり、鑑定評価においては、以下で説明する土地残余法に準ずる手法において検討すべきではないかと考えられます。

3)スライド法の特性
 スライド法は、既定賃料(必要諸経費等を除く純賃料)に、一定のスライド率を乗じて求めた値に、賃料改定時の必要諸経費等を加算して試算賃料を求めるものです。
 スライド法で、既定の純賃料を基礎として試算賃料を求めるのは、既定賃料合意の事実を尊重する立場に立つからです。また、スライド率として、一般には消費者物価の変動率を採用することが多いのですが、これは最も一般人の生活に関係の深い消費財の変動率と賃料の改定率とを相似関係に置くことで社会的な公正を確保しようとするからです。また、消費者物価指数を採用することで、地価の昂騰の影響を緩和し、結果として経済的弱者である借地人の保護を図ろうとするもので、社会法的立場に立つ手法といえます。
   但し、賃料が変動する要因は複雑であり、消費者物価以外の賃料の変動要因とも比較検討すべきであるという批判が、経済合理性を重視する立場からは指摘されることになります。また、最近の判例で、必要諸経費等の一つである公租公課が、地価下落期であるにも拘らず増徴され、これがスライド率以上に試算賃料に大きな影響を与えてしまうことが批判され、スライド率は、純賃料にではなく、必要諸経費等を含む賃料全体に乗ずる必要があり、しかもそのスライド率は賃料の変動率であるべきとし、よって、賃貸事例を十分ストックしておき、その一般的傾向を把握しておくべきであるという重要な指摘がありました。しかし、地主や借地人の情報開示への心理的抵抗感もあり、それに加えて賃貸借関係が極めて個別性の高いものであることから、一般的な地代の変動率を把握することが困難であるが実態です(※)。また、このような判例の考え方では、スライド法は賃貸事例比較法に類似の手法となると考えられます。

 (※)このような事情に鑑み、東北不動産鑑定士協会連合会では、業務を通して収集した地代の事例を収集・分析する事業に取り組んでいます。

 それでは、どのようなスライド率を採用すればよいのでしょうか。
 私見では、スライド率は、客観的事情を反映するものと、賃貸借当事者の個別的事情を反映するものとに区別して分析し、両者のプラス・マイナスの関係を総合的に比較検討して総合変動率を調整するのがよいように思われます。
 まず、客観的事情として、消費者物価、企業物価、百貨店の売上げ等の変動率や金額が公表されていますので、これを考慮することは、一般的な経済社会情勢を賃料改定に反映させるものであり、衡平性を確保する上で重要なことと考えられます。また、個別的事情を反映するものとして、借地人の所得の変化や売上高や利益の推移、地主側においては地代のコストである公租公課の変動率がふさわしいと考えます。
 これに対しては、客観的事情を反映するものだけでよいとする立場も考えられます。この考えは、賃貸借当事者の個別の事情を反映させるということは、ややもすればどちらかの側に偏った結論となる可能性すらあるのであるから、それを避け、出来るだけ個別の事情に捉われない客観的な変動率を採用すべきであるというものです。
 しかし、賃料はそれぞれの経済的な状況に応じて、個別具体的に締結され形成されているのですから、私見では賃料の改定に当たっても同様に個別的事情についても考慮するのがよいと考えます。そのような場合、客観的事情と賃貸借当事者の個別的事情の関係をどう考え、どのように総合的に判断ればよいでしょうか。即ち、例えば、景気が良くて、借地人の業績も良いとき、また、その反対に景気が悪く、借地人の業績も悪いときもあれば、景気などの客観的情勢が良いにも拘わらず、借地人の業績が悪い場合や、その反対の場合があります。そのような場合には、賃貸借契約の経緯や賃料不相当化の事情等、その他の比較考量項目とも比較検討し、衡平性の立場から総合的にスライド率を判断するということになるでしょう。この点に関しては、第3章、2)でも考えます。

4)賃貸事例比較法の特性
 賃貸事例比較は、比隣の賃貸事例を調査し、それらに比準して試算賃料を求めるものであり、土地の鑑定評価における取引事例比較法に相当する手法であり、最も基本的な手法であるといえます。しかし、それにも拘らずこの手法の適用は不完全なものとなる場合が多いのが実態です。特に、地代の場合には困難が伴います。事例数が少ない上に、賃貸借契約は当事者により個別性が強く、加えて契約の内容を詳細に調査するには、調査対象となった人の抵抗が強く、その契約内容を比較検討することもまた困難な作業であるからです。
 しかし、上記のような欠点はありながらも、賃貸事例比較法は適正地代の判定に当たって重要な手法です。つまり、「この辺りの地代は、概ね、年額20,000円/u〜30,000円/uだ」等、世評の相場があり、その相場相当の地代が存することも多いからです。よって、この手法の性格や資料の限界を十分に認識して、他の手法と併せ活用することは重要であり、特に、事例の収集に際し、比隣における賃貸借や賃料水準のあり方等の賃貸借市場の調査を行うことは鑑定評価の精度を高めることになります。最近の判例では、事例として収集すべきものについては、自由な競争によって形成された賃料であるべきであるとして、そのような事例の蓄積が必要であると指摘しています。しかし、このような事例の収集は家賃については可能なことと考えられますが、地代の場合、そのような事例が市場に多数存するためには、売買に替って借地が一般的な土地利用の手段になる必要があり、なかなか困難な要求のように思います。全国的な調査としては、地代の利回りの調査があるようですが、広域的であり、また、最近のものに限れば事例数が少ない等の欠点があります。賃貸事例比較法において採用できる事例というのは、時間的に最近であること、地域的に近いこと、利用状況が類似していること等が要求されます。そうでないものは比較可能性という点で劣るからです。但し、最近は全国的に市場が形成される傾向の強い不動産もあり、そのような不動産にあっては、有効な資料となるのではないでしょうか。

5)土地残余法に準ずる手法の特性
 土地残余法によって求めた土地に帰属する純収益は、地代の源泉であり、地代そのもの、または、地代を含むものです。換言すれば、土地に帰属する純収益は地代の上限値であり、最近の判例に示された考えによれば、これより低い地代は値上げの余地があり、これより高い地代は値下げされるべきという指摘がなされました。但し、既定賃料と求められた純収益との開差についてどのように調整が行われるべきであるかまでは、判例には示されておらず、この意味でも差額配分法等の手法の考え方はいまだその意義を失っていないと考えられます。
 なお、この手法によって求めるべき土地に帰属する純収益とは、近隣地域の標準的使用に適合し、土地・建物が最有効使用に供されている場合に獲得されるものです。個人的な嗜好性を排除し、客観的で、且つ、社会的衡平性が保たれる純収益のことです。この手法については、第2章、2)でも考えます。

6)公租公課倍率法の特性
 公租公課倍率は、裁判等で活用されてきました。
 公租公課倍率は一般的に2〜3倍と考えられていますが、実際には、かなり幅があり、10倍以上のものもあります。また、住宅地は低く、商業地のものは高いという傾向があります。しかし、倍率の根拠が曖昧である場合が多いという欠点があります(※)。
 公租公課倍率は、一定の規範となるものですが、公租公課というコストからのアプローチ(地主の立場)ではなく、最近は、賃料について事業収益性との関係を重視するインカム・アプローチ(借地人の立場)が重視される市場になってきていることから、あくまでも参考とすべき手法といえます。

 ※地価下落によって、首都圏では住宅地で3倍に回帰してきているとの研究成果があります。東北地方では、東北不動産鑑定士協会連合会が、過去における公租公課倍率を調査しています。

  第2章 賃料の鑑定評価方式の変遷

1)右肩上がりの経済における手法の意義
 古い裁判例では、土地の資本的利用を前提とした「利回り法」が主体となっていましたが、右肩上がりの経済の下では、「利回り法」は徐々に脇役となり、替わって、「差額配分法」、「消費者物価に基づくスライド法」が重視されるようになり、加えて「継続賃料利回り」を採用した新たな「利回り法」が考えられました。これらの新たな手法は、上記のように社会法的な弱者保護の立場を重視した手法でした。
 賃料の鑑定評価手法がこのように変遷してきた背景には、借地法の性格が、いくつかの戦争による混乱と経済の高度成長を経て、地主と借地人の対等な関係を重視する姿勢から、借地人保護に舵を切っていったことがあります。特に、経済の高度成長によって、人口の都市集中やそれに伴う著しい地価の上昇、土地の交換価値と利用価値の乖離という都市問題、地価問題が発生しました。地代の問題もそのような矛盾に深く根ざしたものであり、その解決の在り方として、社会法的な弱者保護の立場が重視されたのです。そして、借地人保護という借地法の姿勢が、継続地代の鑑定評価において具体的に表れたものが、差額配分法、スライド法、新たな利回り法等の手法の採用であったのです。つまり、賃料の鑑定評価手法は、この時代の都市問題、地価問題に基づく賃貸借当事者間の相克の調整的、解決的手法として考え出されたものといえるのです。

2)安定成長及び右肩下がりの経済における手法の意義
 安定成長及び右肩下がりの経済の下では、差額配分法、スライド法の考え方は、必ずしも賃借人保護の社会法的な手法としての意義があるばかりではありません。このような経済の下では、企業にも売り上げや利益の低下が生じるからであり、経済合理性に基づき適正地代を導くべき「資本的利用形態」の借地人にも適用すべき状況が生まれてきました。
 判例(商業地の借地に関するものですが)では、地代が連動するのは地価ではなく借地上の建物の最有効使用によって獲得される収益の内、土地の帰属分であるとの主張がなされました。これは、不動産の価格が、収益価格を重視して決定されること、つまり、土地や建物に対する投資額を基準とするのではなく、不動産から上がる収益に基づき土地価格が決定されるという考えと軌を一にするものです。また、この考えは、不動産価格が地域の地価水準ベースとして形成されるということよりも、それぞれに土地利用の程度を反映して個別的に形成されるという不動産価格形成の個別化という考えに符合した考えでもあります。確かに地価は一般には大幅に下落しましたが、地代は値上げされるもののあれば値下げされるものもあり、地代と地価の連動性が必ずしも明らかではなく、個別化といえる現象が観察されていました(地価についても)。そして、このような現実の市場における地代の個別化は、地価全般の変動ではなく、土地の利用程度によって決まる収益と、それを源泉とする借地人の地代負担能力によって説明することができるのです。加えて判例の考えは、最有効使用という客観的な基準に基づく収益を基準としている点で、衡平性も担保する考え方でもあります。最有効使用というのは、特別の能力のある人ではなく、一般的で、通常の使用能力のある人であれば実現できる利用方法とされているからです。但し、借地上での収益を、土地の最有効使用、つまり、土地の効用由来の部分と、経営という人由来の部分に区分することはかなり難しい問題であることも指摘しなければなりません。地代や地価の個別化には、経営という人的要素が大きく関係している場合が多いからです。しかし、判例の考え方は、そのような適用が困難な点もありますが、新たな時代における市場のあり方を正しく説明できるものであると評価されます。

3)経済学者からの長年の批判
 経済学者からは、フローである収益からストックである地価が説明され、導かれるだけであり、その逆の方向、即ち、ストックである地価からフローである地代は説明出来ないとする長年の批判がありました。このような経済学者の考えに整合的な手法は、土地に帰属する純収益から地代を導く「土地残余法に準ずる手法」ということになります。一方、新規の地代を求める積算法や、継続地代を導く利回り法、差額配分法は、その理論的根拠が否定されることになります。

  第3章 借地人の形態、賃貸借契約の経緯、賃料不相当化の事情等の考慮

 適正な継続賃料の判定にあっては、以下の事項を考慮しなければなりません。
 ここに示されるのは、各手法によって求められた複数の試算賃料を調整し、適正な賃料を導く際の判定基準の部分です。

1)借地人の形態
 借地人の形態は、@「生存権的利用形態」、A「生業的利用形態」、B「資本的利用形態」の3つに区分されます。
 土地に住居を建て単に居住するだけの場合が「生存権的利用形態」の借地人であり、そこで家族経営で生計を立てる場合が「生業的利用形態」の借地人であり、従業員を雇用し、株式会社等として事業を営む場合が「資本的利用形態」の借地人です。また、Bについては、地元の中小企業から、株式市場への上場を果たしているような大企業、グローバルな世界企業等の区別も必要です。
 このような区分が必要である理由は、@「生存権的利用形態」、A「生業的利用形態」、B「資本的利用形態」の区分に基づき、借地借家法の保護のあり方がは異なるからです。例えば、「資本的利用形態」の借地人である場合には、社会法的保護を前提とした地代ではなく、経済合理性の立場から適正地代を導く必要があるのです。

 2)賃貸借の経緯、賃料が不相当化するに至った事情
 賃料が不相当と判定されるためには、「賃料不相当化の事由」が必要とされます。即ち、@既定賃料決定時期から相当期間が経過していること、A地価の変動、租税の変化、比隣地代の変化等の経済的事情の変動が認められ、既定賃料が不相当化し、且つ、B賃料不改定特約のないこと、以上の3つの事由が必要とされます。
 Bを除く@とAについては、交互に関連させて判断する必要があります。つまり、通常、賃料の改定の期間は2年から3年と考えられていますが、経済状況が大きく変化しているのであれば、短い期間であっても改訂は認められるべきです。
 また、Aの要件は、経済社会的事情の変化(客観的事情の変化)と賃貸借当事者の個別事情(個別的経済事情)の変化との2つに分けて、その相互関係の中で考えると分かり易いと考えられます。
 客観的事情とは、例えば、経済が低迷し、地価が前回賃料改定時から相当下落しているとか、比隣地代や租税公課も、前改定時から下落したとか、賃貸借当事者の個人的な事情と係りなく発生する外部環境の変化です。
 個別的経済事情とは、借地人の売上げが減少しているとかの事情です。
 このような客観的事情と個別的経済事情についても、相互の関係を考慮する必要があります。つまり、賃料を改訂するためには、客観的事情が変化するだけでは足りず、そのような変化が予測し得なかったという個別的経済事情が必要であるからです。つまり、自助努力ではどうしようもないというような経済社会的な事情の変更が必要なのです。そのような「自助努力ではどうしようもない」というような客観的事情の変化があったか否かという判断は、客観的事情についての分析に加え、賃貸借当事者の個別的経済事情を関連づけないでは説明できないのです。また、企業努力を精一杯しているという状況は、情況証拠だけでは足りず、客観的なデータでそのことを補強する必要があると考えます。

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